TVアニメ『四月は君の嘘』に関わるスタッフのリレーインタビュー。
第2回目は作画スタッフの要、キャラクターデザイン・総作画監督の愛敬由紀子さん。
瑞々しい青春を描く、そのビジュアルについて伺いました。
時間をかけてじっくりと作ったキャラクター設定
――最初に原作の『四月は君の嘘』の第一印象をお聞かせください。
作品として完成度が高いなと思いました。少女漫画と少年漫画の中間くらいの絵の印象があって。これをアニメとして表現するのは難しいなと感じました。
――今回アニメに向けてキャラクターデザインを制作するにあたり、どんなところを大事にしようとお考えでしたか。
原作の新川直司先生の絵は、表情や芝居に実体感や説得力がすごくあるんですね。そこは原作に忠実な印象にしようと考えました。目の大きさや、本当に細かいところを微調整するぐらいで、全体の印象は原作と変わらないようにすることを心がけました。新川先生やイシグロキョウヘイ監督に何度もラフデザインを見ていただいて、丁寧にクリンナップ(清書)へ持っていきました。
14歳の等身大のキャラクターたちに込めた想い
――それぞれのキャラクターを描くポイントをお聞かせください。有馬公生はいかがですか。
新川先生からは「男の子らしく描いてほしい」とご意見をいただきました。公生って第一印象は、トラウマを引きずってちょっと弱々しく見えがちなキャラクターだと思うんです。真面目でメガネだし。でも、原作をよく読むと、ズボンを腰履きこそしていないものの、わりとオシャレで。全体的にラフな雰囲気があって。等身大の14歳の印象があるんです。だから「真面目でメガネ」という、いわゆるテンプレ(テンプレート)な感じにならないように、男の子らしさを意識して描いています。あと、表情とか、公生は「感情を顔に出さない、微妙な変化」がある少年なので、描くのがすごく難しいキャラクターですね。
――公生は、子供時代もひとつのポイントになりそうですね。
そうですね。子供のときはわりと天真爛漫で。14歳の公生との差が大事だなと思っています。
――宮園かをりはどのように描いていますか。
最初にプロデューサーや監督から「かをりはとにかくかわいくして欲しい!」と言われました(笑)。なぜかというと、かをりの言動ってすごく誤解されやすいんですね。たぶん原作を読まれている方ならわかると思うんですが、乱暴だし、強引だし。もしかすると「え? なんで?」と戸惑ってしまう視聴者が出てしまうかもしれない。そうならないように「多少強引でも許せちゃうくらいの感じが欲しい」ということでした。「視聴者が恋したくなるくらい、かわいらしく」というリクエストがあったので、いまも奮闘中です。
――公生の幼なじみ、澤部椿と渡亮太は?
椿は「感情が全部表に出るタイプの人間」なので、すごく描きやすかったです。自由に表現豊かに描ければと思っています。渡は……見た目はイケメンで、人間性も「なんでこんな人間ができているんだろう」っていうくらいイケメンなんです。だから、イケメンに描きたいと思っているんですけど……私、男の子を描くのが苦手なんです(笑)。どうしても女性が男の子を描くと、線が細くなりがちでナヨナヨしてしまうんですよね。いま、がんばって描いているところです。
シリアスとギャグ、繊細な芝居の日常
――今回の特徴である演奏シーンはどのように描いていますか?
演奏に関しては、演奏作監(作画監督)というポジションの浅賀さんが、楽器の持ち方や演奏の芝居を監修しています。私はその方がチェックした原画を見て、キャラクターの表情や体型を修正していくという流れになっています。キャラクターは演奏中自分の感情をぶつけているので、日常ではしない表情やその場の臨場感を出そうと思っています。
――今回の演奏シーンは、モデルアーティストの方の演奏を撮影して、それを参考に作画をしているんですよね。
そうなんです。最終的にすべて作画しているので、1カットの原・動画用紙の分量がこれくらい(4~5センチ)になるんですよ(笑)。パンパンのカットが届いて、これはすごい量のカットが来たなと思っても、中を開けると、実際には2カット分ぐらいだったりして。みなさん真面目に丁寧に取り組んでいるので、映像として仕上がるのが本当に楽しみなんです。
――演奏シーンは、本作の見どころのひとつですよね。
ある話数はほぼ1話丸ごと演奏シーンだったりするので(笑)。制作現場はだんだん焦りを感じています(笑)。
――日常シーンはいかがでしょう。14歳のキラキラした青春が映像化されるのはとても楽しみです。
今回、背景や色彩がすばらしいんです。そこにキャラクターを乗せるとすごく映えます。キャラクターとしては、なるべく繊細に芝居をつけようと思っていて、その中で瑞々しい表情を描いていければと思っています。
――今回は崩し顔(ギャグ顔)も端々に登場しますね。
最初、イシグロ監督は「ギャグ描写がなくても良いんじゃないか」と思っていたそうなんです。ところが、ギャグ顔なしで絵コンテを切ってみたら、すごく暗く重くなってしまったと(笑)。この作品のバランスとして「ギャグ顔」はやっぱり外せないんですね。同時に、公生のトラウマが語られるシリアスな回想シーンはガチで描いています。公生のお母さんが登場するんですが、原作では最初、お母さんが「得体のしれないもの」のように描かれていて。それを強調するように、怖さを感じられるくらい、首筋をガリガリに痩せ細った感じに描いています。イシグロ監督からは「実態感が欲しい」といわれていて、説得力が出るようにハードに描いています。そのあたりはすごく上手い原画マンさんがお描きになっているので、つばが飛んでいたり、痛みを感じるくらい激しくなっています。
――愛敬さんは、どのあたりに注目してほしいと考えていますか?
やはり演奏シーンです。みなさんガチで描いていますから。あとは日常シーンも、すごくきれいに仕上がっていますので、そこも観ていただきたいですね。今回は原作ファンのみならず、普段アニメをご覧にならない方も楽しめる作品になっていると思います。原作がとにかくすばらしいので、とても見やすい作品になっています。ぜひ、楽しんでいただきたいです。
次回(9月18日予定)次回(9月25日予定)は、吉岡たかをさん(脚本・シリーズ構成)のインタビューを公開します。
お楽しみに!