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『四月は君の嘘』連載インタビュー

第13弾 アニプレックス 宣伝プロデューサー相川和也

アニメ『四月は君の嘘』に関わるスタッフのリレーインタビュー。
第13回目は宣伝Aとして、『君嘘』のプロモーションを手掛ける、
アニプレックス企画制作グループ宣伝部の相川さん。
WEBラジオやテレビCMなどを届ける宣伝の現場を伺いました。


「はじめての宣伝プロデューサーとしてたくさん挑戦しています」

『君嘘』の宣伝担当に立候補した理由

――まず基本的なことをお聞きしたいんですが、アニプレックスでは、作品の宣伝担当はどのように決まるのでしょうか。

作品によって様々です。自ら立候補することもあれば、宣伝担当同士の仕事量を見て、上司がバランスよく割り振ることもあります。『君嘘』に関しては、僕が立候補することで担当になりました。

――立候補だったんですね。なぜ『君嘘』に立候補したんですか。

原作を学生のころに読んでいたんです。その当時は数巻しか出ていなくて一気に読み切りました。まるで本当に聴こえてくるような迫力満点の演奏シーンや、人間ドラマを深く深くまで描いているのがとても印象的で。もともと、アニメ業界を目指していたので、「この作品に携わりたい!」と強く思える作品でした。大学卒業後にアニプレックスに入社して、最初は営業部に配属されました。レンタルDVDの営業担当になり、地方出張が増えたんですね。それで博多出張に行ったとき、天神のTSUTAYAで原作コミックを見つけて、飛行機で読もうと思ってあらためて単行本を買いました。そしたら連載が進んでいた分、さらに人間ドラマが濃くなっていて、演奏や心情の演出もとても鮮やかで、再び魅了されてしまって。同時期にアニメ化の企画がアニプレックスで動いていたというのはまさに運命のように感じています。

――実際に担当に決まるまでの経緯は?

最初に立候補したのは、僕が宣伝部に異動してから10カ月くらい経ってからでした。宣伝部に異動してからずっと、先輩で、本作のもうひとりの宣伝プロデューサーである鈴木に話をして。
彼は、本作のプロデューサーである斎藤の担当作品「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の宣伝プロデューサーをしていたという経緯もあり、先に本作の宣伝プロデューサーを担当することは決まっていました。
その後、上司との面談を経て、鈴木と共に『君嘘』を担当することになりました。

――自らの意志で作品の宣伝を担当するのは『君嘘』がはじめて?

そうですね。それまでは、鈴木に仕事を教わりながら、一緒に作品を担当し、宣伝業務を覚えるので精一杯でした。「宣伝プロデューサー」という立場も本作品がはじめてです。

――今回は鈴木さんと相川さんは2人とも宣伝プロデューサーとクレジットされています。

当初は、鈴木が「宣伝プロデューサー」で、僕が「宣伝」という立場だったんですが、今まで学んだことを、今度は自分でしっかり発揮できるようにという意味を込めて、「宣伝プロデューサー」の責任と裁量を託してくれたのだと思います。

――宣伝プロデューサーとはどんなお仕事をする役職なのでしょうか。

宣伝プランを考え、宣伝スケジュールを考え、個別の宣伝施策を考え、その施策を実施するための宣伝予算を管理することが役割ですね。
この作品をどうやって宣伝し、どのようなスケジュールで情報を露出し、露出するためにどのような方法をとって、それを行うためには費用がどの位必要なのか。
宣伝という分野における、責任者と言い換えれるかもしれません。

――宣伝プロデューサーの仕事を初めてして「これは難しいな」……という話があれば。

当初自分が考え出したプランで宣伝すると……予算がとてつもなくかかるんですよね。宣伝ってひとつひとつ意外とお金がかかるんだなあと思いました。やりたいことはたくさんあるけど、予算の範囲で作品が最大限ユーザーの皆さんに届くようにする、その難しさを今も感じているところです。

『四月は君の嘘』を宣伝していくための仕掛け

――『四月は君の嘘』という作品をどんな風に宣伝していこうとお考えでしたか。

『君嘘』って「青春」と「音楽」の要素が大きい作品なんですが、放送前に「音楽」を前面に出した宣伝を行うとユーザーに敷居の高さを感じさせてしまうのではないか、という懸念がありました。「音楽」はこの作品にとってとても重要な要素ではありますが、「音楽アニメ」として受け止められることで、最初のふるいから滑り落ちてしまっては意味が無いなと。そこで最初は、もう一つの本作の魅力である「青春」を推しだした宣伝を行いました。「音楽」を全面に打ち出して、楽器を持ったキービジュアルを露出したのは、実はオンエアの一週間前なんです。

――宣伝では大きな仕掛けがいくつかありましたね。

そうですね。この『君嘘』は制作がかなり早い段階から進んでいたので、宣伝を開始する前からいろいろな企画を仕込むことができたんです。たとえば、練馬区や西武鉄道といっしょに『君嘘』を盛り上げていこうというのは、斎藤プロデューサーがすでに練馬区や西武鉄道の各部署と話を進めていたので、それをどう伝えていくかをプランニングしていくことになりました。

――今回、宣伝することでムチャしたことはありますか?

それは間違いなく、ピアノの企画(宣伝A 独奏者への道)ですね。(笑)まさかピアノがこれほどまでに難しいとは思ってませんでした。

――やはり、それですか! なぜあれをやろうと思ったんですか。

『君嘘』を楽しむうえで、毎週色々と更新できるネタがあれば良いなと思っていて。それがこのスタッフインタビューでもあり、スタジオレポート、「宣伝A」の企画だったりするんです。宣伝Aに関してはたしか鈴木が「ピアノ弾けば?」と打ち合わせでひと声言ったのがきっかけだったような気がします。最初は「やりますか!」みたいな、そこまで深刻に考えてはいなかったのですが、実際にやってみると……ピアノは大変だなあと。あと、サボったときに怒ってくれる人がいないと人間ってこんなに怠けるんだな、と実感しています。(笑)

――宣伝Aさんはピアノの経験をどれくらいあるんですか?

まったくないです。ピアノのドレミの位置もわからないくらいでした。というか、今もよくわからないです。

――練習はしているんですよね?

し、してます。

――どんな練習をしているんですか?

新宿のビルの上にある、とある音楽教室に通っています。ドレミファソーラファ ミ・レ・ドのところですね。音楽の先生にこの企画のことを説明したら「基礎から練習する時間はないから、一曲だけを完璧に弾けるようにしましょう」と言われました。「『月の光』は弾けるようにしますが、ピアノができるようになる保証はありません」と言われてしまったんです。だから、いまは音と動きを体で覚えているところです。だから、WEBラジオでほかの曲を弾くと完全にド素人ぶりが明らかになってしまうんですよ。

――WEBラジオ『四月じゃないよ、君嘘だよ。ラジオ』で宣伝Aさんのピアノが披露されていますね。あのラジオはどんなコンセプトではじめたのでしょうか。

「青春もの」のラジオって真面目になりがちなので、もちろん、それもひとつの方向性としてありなんですが、『君嘘』ラジオにはバラエティの要素が欲しいなって思ったんです。というのも、『君嘘』本編もシリアス一辺倒じゃなくて、ギャグで崩すシーンもたくさんある作品なので。作品が持つその要素を上手く落とし込めるようにと、方向性を決めました。WEBラジオに限らず、宣伝の外枠は割とバラエティで固めています。

――『四月じゃないよ、君嘘だよ。ラジオ』というタイトルをつけたのは宣伝Aさんだという話ですが。

僕のような僕じゃないような。(笑)タイトルは講談社で打ち合わせをしているときに一発で決まったんです。もともと製作委員会で「作品の略称を何と呼ぶか」という話になって、『四月』は類語が多くてネットでなかなか引っかからないので、じゃあ『君嘘』だろうと。その略称を広めるために、ラジオのタイトルもそれにしようかなと提案したら、たしか講談社の立石さんが「それでいいじゃん。」ってノリだったので、即決定した気がします。(笑)結果として、あまり浸透していなかった『君嘘』が皆さんに定着したので良かったです。
とはいえ、『君嘘』と呼ぶように強制しているわけではないので、『四月』でも良いし、『四月嘘』でも良いし、呼びやすいもので作品を楽しんで頂ければ。

――WEBラジオも盛り上がっていますね。

種田さんと佐倉さんのコンビが良いですね。佐倉さんは万能型と言いますか、バラエティ方面に強いというのはほかのラジオを聴いていてわかっていたんですけど、種田さんがどんなパーソナリティになるのかあまり予想がつかなかったんです。僕の想定では佐倉さんがボケて、種田さんがつっこむような流れになるんじゃないかと思っていたんですけど、実際に収録をしてみたら、種田さんにはかなりの天然な一面があって。僕の想定とは逆の、種田さんがボケて、佐倉さんがツッコむという流れになりつつあります。それが君嘘ラジオの良さだったりもするので、意外な収穫だったかな、と思います。
あんなに噛んだ部分をそのままオンエアしちゃうラジオも記憶にありませんが。(笑)

Goose houseのカバーソングコラボ

――今回「のだめカンタービレ」のマングースが宣伝隊長をやっていますね。

これはプロデューサーの斎藤のアイデアだったと思います。『君嘘』はノイタミナ枠だし、ノイタミナの音楽アニメといえば『のだめカンタービレ』があったので、これは頼んでみようと。そうしたら二ノ宮知子先生もすぐに許可してくださって実現しました。これも真面目な宣伝の中で、ネタ要素を増やそうとした結果です。

――オンエア開始前からフジテレビのノイタミナでCMがたくさん流れていたのが印象にあります。

フジテレビさんのご協力で放送前に約3ヵ月にわたって毎週テレビCMを流すことができたんです。たぶん、他作品でも前例がないと思います。CM枠はたくさんのノイタミナ作品があるなかで争奪戦だったりするので、やっぱりなかなか実現できないと思うんです。

――Goose houseさんによるカバーソングのコラボCMはインパクトのあるものでしたね。

Goose houseさんはカバーソングもできる方々ですし、有名な楽曲の力をお借りして、作品を広めることができたのはプロモーション的にはすごく大きなことでした。youtubeにもカバーソングCMを流したのですが、普段アニメに関心がない層の中にも、キャッチーなカバーソングをきっかけに30秒間のCMを最後まで見てくれた方が多くいました。自分がyoutubeを見るときには5秒経ったら必ずスキップする部分なのに、そこで多くの人に『君嘘』が届いた結果はうれしかったです。カバーソングの持つ力を改めて実感しました。

――スキマスイッチさんの「全力少年」や秦基博さんの「鱗(うろこ)」などの楽曲にあわせてトレーラーが公開される展開はインパクトがありました。

Goose houseさんには大いにご協力いただきました。この企画をやれたのは自分の宣伝経験としてもすごく勉強になりましたね。

――TVアニメ『君嘘』に手ごたえを感じたのはいつですか?

9月末に実施した先行上映会で第1話、第2話を上映したんです。ギリギリまでスタッフのみなさんがつくりこんでくださって。その第2話の演奏シーンを見たときに、この勢いで全話をつくれるとしたら……と鳥肌が立ちましたね。制作自体はかなり前から、進んでいて。納品がギリギリになったというウワサが一度流れたことがあるんですが、実際はクオリティアップのために最後の最後まで粘っていたからこそのギリギリだったんです。

――そこは大事ですよね。

早く仕上げることも大事だと思いますが、作品のクオリティを守ることも大事だと思うんです。そういうときに『君嘘』のチームはギリギリまでつくることを選ぶようなチームなんです。現場はすごく作品に対してテンションが高くて、それもイシグロ監督の持っている人としての魅力なんだろうなと思います。イシグロ監督はまわりの人のテンションをあげる空気を持っていると思います。

――『四月は君の嘘』の放送終了にあわせて大きなイベント「フィナーレイベント」が4月5日に開催されますね。

Blu-ray&DVD第1巻にチケット優先販売申込券がついているので、ぜひご購入頂き応募していただけるとうれしいです!原作も3月号で連載終了し、3月末にはアニメも最終回となります。本当の意味でフィナーレになりますし、すべての『君嘘』ファンに満足していただけるイベントになると思います。ぜひ、楽しみしてください!